手首の痛み(手関節痛)の原因・主な疾患と鍼灸によるアプローチ

「手首が痛くて物を持てない」「ドアノブを回すとズキッとする」
手首の痛み(手関節痛)でお悩みの方は非常に多くいらっしゃいます。手首の痛みは、単なる使いすぎだけでなく、骨折や神経の圧迫、さらには首や肘のトラブルが原因で起こっていることも少なくありません。
当院では、現代医学(解剖学・病態)と東洋医学(経絡・気血)の両面から痛みの本質を見極め、一人ひとりに合わせた最適な施術を行っています。

手首の痛みを引き起こす代表的な疾患

手首の痛みは、痛む「場所(親指側・小指側など)」や「年齢」「痛みの出方」によって原因が異なります。

① 親指側の痛み

  • ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎):40〜50代の中年女性、周産期・更年期の女性に多くみられます。親指を広げたり動かしたりすると、手首の親指側(橈骨茎状突起部)が激しく痛みます。
  • 舟状骨(しゅうじょうこつ)骨折:転倒して手をついた際によく起こります。「ただの打撲や捻挫」と見逃されやすく、放置すると骨がくっつかなくなる(偽関節)リスクがあるため注意が必要です。

② 小指側の痛み

  • TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷):手首の小指側にあるクッション(軟骨や靭帯の集まり)の損傷です。雑巾絞りや、テニス・ゴルフなどの手首をひねる動作でなかなか治らない痛みが生じます。

③ 手のしびれを伴う痛み(神経の圧迫)

  • 手根管症候群(正中神経の圧迫):妊娠中・閉経前後の女性や、手を酷使する方に多く、親指から薬指の半分にかけてしびれや痛みが出ます。進行すると親指の付け根の筋肉(母指球筋)が痩せてきます。
  • 尺骨神経管症候群(ギヨン管症候群):薬指の小指側と小指がしびれ、細かい作業がしにくくなります(巧緻運動障害)。自転車のハンドルによる持続的な圧迫などが原因になります。

⚠️ 注意したい「ズディク骨萎縮(CRPS)」

骨折や捻挫などの比較的軽いケガの後、期間が経っても強い痛みや手の腫れ(浮腫)、皮膚の血流異常が続く場合、難治性の慢性疼痛症候群である可能性があります。この場合は速やかに専門医の受診が必要です。

東洋医学からみる手首の痛み(痹証:ひしょう)

東洋医学では、関節の痛みや腫れ、動かしにくさを「痹証(ひしょう)」と呼びます。「痹」とは、経絡(気や血の通り道)が詰まって通じなくなっている状態を指します。

お体の状態や季節、環境によって、主に以下の4つに分類されます。

証(タイプ)主な原因と症状の特徴
行痹(こうひ)風の邪気が原因。あちこち痛む場所が移動する(遊走性)。
痛痹(つうひ)寒さの邪気が原因。激しく冷えて痛み、温めると楽になる。
着痹(ちゃくひ)湿気の邪気が原因。重だるい痛みが固定し、雨の日に悪化する。
熱痹(ねつひ)熱の邪気が原因。患部が赤く腫れて熱を持ち、触れないほど痛む。

当院の鍼灸治療(配穴とアプローチ)

当院では、解剖学的な病態に基づく「局所へのアプローチ」と、東洋医学の弁証論治に基づく「全身へのアプローチ(本治法)」を組み合わせたオーダーメイドの鍼灸治療を行います。

1. 病態に応じた局所・近位穴へのアプローチ

痛みの原因となっている腱鞘、関節包、神経の絞扼(圧迫)部位の炎症を抑え、局所の気血の巡りを改善します。

  • ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎):橈骨茎状突起部の炎症・狭窄に対して、陽渓(ようけい)列缺(れっけい)、および長母指外転筋・短母指伸筋の筋腹への置鍼。
  • TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷):手関節尺側の靭帯・軟骨部の除痛と修復促進のために、陽谷(ようこく)養老(ようろう)神門(しんもん)
  • 手根管症候群(正中神経障害):手根管の圧迫軽減と屈筋腱の緊張緩和のために、大陵(だいりょう)内関(ないかん)
  • ガングリオン・変形性手関節症:関節包や腱鞘の局所、および陽池(ようち)、腕骨(わんこつ)などへの灸療や置鍼。

2. 弁証論治に基づく東洋医学的アプローチ(本治法)

手関節痛は東洋医学で「痹証(ひしょう)」に分類されます。外邪(自然界の環境要因)と体質を見極め、遠位穴(手足や背中のツボ)を用いて根本から改善します。

証(タイプ)病態・特徴専門的配穴(選穴の意義)
行痹(風邪偏盛)痛む場所が移動する風池・膈兪・血海・太衝
(治風先治血、血行風自滅:血を巡らせて風の邪気を追い払う)
痛痹(寒邪偏盛)冷えると激しく痛む腎兪・関元・陽池(温灸)
(陽気を補い、経絡を温めて寒さの邪気を散らす)
着痹(湿邪偏盛)重だるく雨の日に悪化陰陵泉・足三里・脾兪
(脾胃の働きを高め、体内の余分な湿気を排泄する)
熱痹(熱邪偏盛)赤く腫れて熱感がある大椎・曲池・合谷
(諸陽の会である大椎や、気分の熱を清める経穴で消炎を図る)

現代医学的な検査法(アイヒホッフテストやファーレンテスト等)による評価と、東洋医学的な脈診・舌診・腹診を合わせることで、痛みの局所だけでなく「なぜそこが痛むのか」という根本原因にアプローチします。手首の長引く痛みにお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。