脱毛症

<症状>
頭髪だけではなく、顔や体の毛も含めて毛が抜け落ちる、数が少なくなる、短く・細くなる

※注意を要するもの
☑頭部全体の毛が抜けたもの⇒治りにくい
☑加齢によるもの⇒病院での治療を推奨
☑抜毛のクセがあるもの⇒病院へ

<鍼灸院では>
精神的ストレスによる円形脱毛症に対して、脱毛部位への散らす鍼、中心部へのお灸などを行います。

【もっと詳しく】
<現代医学的>

A)円形脱毛症

〔原因〕

自律神経失調、精神的ストレス等によって起こると考えられている。

〔症状〕

突然ある部位の毛髪が脱落し、2~3㎝の円形ないし楕円形の脱毛斑が生じる。脱毛の境界は鮮明で単発の場合や多発する場合もある。青年期、学童期に好発する。

〔治療方針〕

局所の循環改善を目的にその周囲および中心部に施術し、精神的因子に対して頭部、頚肩部を中心に筋緊張、圧痛、硬結などの反応が見られる経穴、反応点に施鍼、施灸する。

〔処方例〕

脱毛部周囲の散鍼、中心部の施灸を行う。その他、梅花鍼により軽度の刺激を与える。

天柱、肩井、風池


<東洋医学的>

『内経』では脱毛を「髪と堕」として述べている。本症は多くの疾患にみられるが、ここでは脱毛を主症とするものについて述べる。髪は腎と関係が密接であり、また「血の余」ともいわれており血との関係も密接である。

A.分類

①血熱による脱毛:精神的刺激により火が盛んになり、血熱により内風が生じると脱毛が起こる。

②瘀血による脱毛:精神的刺激により気滞血瘀が生じたり、または他の原因により血が停滞して血行が悪くなり、毛髪がうまく栄養されなくなると脱毛が起こる。

③気血両虚による脱毛:慢性疾患や産後などにより気血が虚し、毛髪がうまく栄養されなくなると脱毛が起こる。

④肝腎陰虚による脱毛:肝腎陰虚で陰血が不足し、毛髪がうまく栄養されなくなると脱毛が起こる。また陰血が不足していると燥が生じやすく、これが血燥となることにより脱毛が起こるものもある。

B.鑑別

①②は実証であり、③④は虚証である。①②は精神的刺激により起こるものが多い。①は部分的に脱毛することが多く、全身症状は著明でない。ただし口渇、便秘、尿が黄色い、舌質は紅、舌苔は黄など熱証の症状・所見を伴うものもある。②は部分的または全体的に脱毛し、持続的に経過するものが多い。③は血年齢に関係なく慢性病や産後に発病し、一般的に掻痒感はない。また息切れ、心悸、顔につやがない、舌質は淡、脈は細弱などの気血両虚による症状・所見を伴う。④は成人に多く、毛髪は細く柔らかくて油状の光沢があり、頭頂部や前額角に起こりやすく、頭皮の油脂が多い。

C.主な病証

A)虚証例<肝腎陰虚による脱毛>

〔病態〕

髪は「血の余」である。肝腎陰虚となり陰血が不足し、そのために毛髪の栄養が悪くなると脱毛が起こる。さらに肝腎陰虚による耳鳴り、めまい、腰や下肢のだるさなどを伴いやすい。

〔症状・所見〕

①主要症状:持続的に脱毛、頭頂または両額角からしだいに脱毛、頭皮の油脂が多い。

②舌脈所見:舌質紅、舌苔少、脈細数

③随伴症状:頭の痒み、耳鳴り、めまい、不眠、腰や下肢のだるさ・無力感

〔治療方針〕

腎陰を補い、さらに血の不足を改善する。主として肝腎の原穴・背兪穴、手足陽明経穴を取穴し、鍼にて補法を施す。また必要に応じて局所に対処する。

〔処方例〕

太谿、腎兪、血海、上廉、足三里

B)実証例<瘀血による脱毛>

〔病態〕

瘀血の停滞により血行が阻害され、毛髪の栄養が悪くなると脱毛が起こる。これは瘀血の停滞により新血が生じないためだとされている。これも持続的に経過するという特徴がある。

〔症状・所見〕

①主要症状:部分的または全体に脱毛、持続的に経過

②舌脈所見:舌質暗紅、または瘀斑がある、脈濇

③随伴症状:口渇するが飲みたくない(水を口に含むだけ)、顔色がどす黒い、頭痛を伴うものもある

〔治療方針〕

瘀血の除去をはかり、血行の改善をはかる、主として手足陽明、足太陰経穴を取穴し、鍼にて瀉法を施す。また必要に応じて局所に対処する。

〔処方例〕

膈兪、三陰交、血海、風池、上廉