耳鳴り、難聴

<症状>
音が聞こえづらい、

※注意を要するもの⇒病院へ
☑音は聴こえるが何を言っているのかわからない
☑急に発症したもの

<鍼灸院では>
聴力の低下がなく、耳鳴りのみ訴えるものに対して、自律神経の調整と内耳の血流改善を目的に、耳の周りや後頚部の反応点に対して鍼灸施術を行います。

【もっと詳しく】
<現代医学的>

A)無難聴性耳鳴

[病態]

 無難聴性耳鳴とは耳鳴があるが、聴力検査で聴力障害がないものをいう。耳鳴は難聴と同時に、聴覚路の直接的、または間接的な障害により生じると考えられているが、成立機転は明らかでない。

[症状]

自覚的な聴力の低下はなく、耳鳴のみ訴える。耳鳴の自覚的な表現はキーン、ジーンが多い。頚肩のこり、後頭部の重圧感を伴うことが多く、疲労、睡眠不足、精神的興奮により耳鳴が悪化し、睡眠、安静により耳鳴が改善することが多い。

[治療方針]

 自律神経を調整し、内耳の血流改善を目的に施術する。耳周囲、後頚部の圧痛・硬結、筋緊張などの反応のある経穴、反応点に施術する。

[処方例]

耳周囲:耳門、聴会、翳風など

後頚部:完骨、風池など



<東洋医学的>

 耳鳴りとは、外界に音がないのにある種の音がしているように耳で感じるものをいう。また難聴とは、聴覚が低下して外界の音が聞こえないものをいい、「耳聾」と称されている。耳鳴りと耳聾の名称は、すでに『内経」のなかで多くみられ、多くの病理が述べられている。例えば『霊枢』口問篇では上気不足による「耳苦鳴」、『霊枢』決気篇では液脱による「耳数鳴」、『素問』臓気法時論では、肝気逆による「耳聾(不聡)」などがある。

 耳鳴りと耳聾とのあいだには密接な関係があり、耳鳴りは耳聾の軽症で、耳聾は耳鳴りのひどいものともいわれている。

A.分類

①肝火による耳鳴り・難聴:情志失調により気機が鬱結し、それが化火すると、火には炎上性があり、清竅に影響すると耳鳴り、難聴が起こる。また激怒して肝を損傷し、逆気して清竅に影響して起こるものもある。

②痰火による耳鳴り・難聴:飲食不節や思慮過度、労倦などにより脾胃を損傷し、運化機能が低下すると水湿が停滞して痰が生じる。痰鬱となり長期にわたって改善されないと化火し、痰火となって清竅を閉塞すると耳鳴り、難聴が起こる。

③脾胃虚弱による耳鳴り・難聴:労倦や飲食不節により脾胃を損傷して脾胃虚弱になると、気血の生成が悪くなり、そのために経脈が空虚となり清竅がうまく栄養されないと耳鳴り・難聴が起こる。また脾陽不振のために、清陽が清竅にうまく昇らず、耳鳴り、難聴となるものもある。

④腎精不足による耳鳴り・難聴:腎精不足には、先天的に不足しているもの、栄養の吸収不良によるもの、高齢や慢性疾患なよるもの、房事過多によるものなどがある。これらにより髄海が空虚になると耳鳴り、難聴が起こる。『霊枢』決気篇で述べている精脱による「耳聾」、液脱による「耳数鳴」は、これに相当する。

<腎精不足による耳鳴り・難聴>

[病態]

 耳は腎の外竅であり、腎虚となり精血が不足して髄海が空虚になると耳鳴り、難聴、さらにめまいが起こる。また腰は腎の府であり、腎は封蔵を主っているが、腎虚になるとこれらの関係から腰のだるさ、遺精、帯下などが起こる。

[症状・所見]

①主要症状:次第に耳鳴り、難聴となる、疲労時に増強、按じると軽減、夜間に増強

②舌脈所見:舌質紅、舌苔少、脈細弱または細数

③随伴症状:めまい、腰のだるさ、遺精、帯下、不眠

[治療方針]

 主として腎精を補い、さらに局所の気血の流れの改善をはかる。主として足少陰経穴、任脈穴を取穴し、鍼にて補法を施す。さらに局所の改善をはかるために手足少陽経穴を取穴する。局部には灸を施してもよい。

[処方例]

翳風、聴会、腎兪、関元、太谿

<肝火による耳鳴り・難聴>

[病態]

不良な精神的刺激を受けて気持ちがふさいだり、あるいは怒ったりして肝火が生じて上炎したり、肝陽が亢進して頭顔面部に上衝すると、このタイプの耳鳴り、難聴が起こる。さらにこのために頭痛、顔面の紅潮、口苦などを伴いやすい。

[症状・所見]

①主要症状:突然耳鳴り、難聴が起こる、耳が脹って痛む、たえず耳鳴りがある

②舌脈所見:舌質紅、舌苔黄、脈弦数

③随伴症状:頭痛、顔面紅潮、口苦、咽頭部の乾き、心煩、怒りっぽい、便秘

[治療方針]

 肝火の清熱をはかり、さらに局所の気血の流れの改善をはかる。主として足厥陰、手足少陽経穴を取穴し、鍼にて瀉法を施す。

[処方例]

翳風、聴会、俠谿、中渚、太衝