めまい

<症状>
ぐるぐるまわるような感じ
ふらふらする、ゆれるような感じがする

※注意を要するもの⇒病院へ
☑手足のしびれ、飲みこむときむせる、物が二重に見える
☑立ったり歩いたりするときに平衡障害がある

<鍼灸院では>
メニエール病の治療に並行して行ったり、肩こり、頭痛、高血圧、眼精疲労、更年期障害、自律神経失調症に伴うものに対して、内耳や脳内の循環改善のために鍼灸施術を行います。

【もっと詳しく】
<現代医学的>
めまいにはぐるぐる回る運動性感覚を伴うもの(回転性めまい)と、眼前が暗くなる、ふらふらするまたはゆれる浮動性感覚(めまい感)のものがある。回転性のものは内耳や小脳に急激な変化が起きた場合に発症し、浮動性の時は病変が徐々に進行するものや変性疾患に多い。


A.注意を要するもの

〔症状〕

①運動感をともなわないめまい感で、持続時間が長いもの、または手足のしびれ、複視、ものを飲み込む時むせる(嚥下障害)などの神経症状を伴うもの(中枢神経系の障害など)

②回転性めまいで起立・歩行などに明らかな平衡障害があるもの

〔所見〕

①眼振や直立、足踏みなどで平衡失調を示すなど平衡機能の障害がある。

②障害部位により、種々の神経障害の所見が得られる。

B.適応となるもの

メニエール病などの耳性めまいでは程度により鍼灸治療の対象となるが、適応となるのはめまい感である。

A)めまい感

〔病態〕

身体の平衡を保つためには、眼、内耳や各深部知覚からの情報が中枢でうまく統合される必要がある。この系統に障害が起きると平衡感覚がくずれてめまいが生じる。鍼灸治療は、この系統の可逆性の機能的障害により出現するめまい感を主たる対象とする。

〔症状〕

めまい感は、ふらふらするなどの浮動性の感覚や眼前が暗くなる感覚で、肩こり、頭痛、高血圧、眼精疲労、更年期障害、自律神経失調などに伴う。

〔所見〕

脳・脊髄神経の異常がなく、眼振や規律障害や歩行障害などの平衡機能障害もない。

〔治療方針〕

内耳や脳内の循環改善の目的で施術する。乳様突起周囲には骨孔があり、外耳孔周囲の血管は脳内の循環と関係が深い。椎骨動脈、内・外頸動脈などの循環改善を中心として治療方針を立てる。耳周囲などの反応がある経穴、反応点に施術する。

〔処方例〕

耳周囲:和髎、完骨、頭竅陰

後頚部:風池

肩背部:肩井

<東洋医学的>

目がかすんで目の前が暗くなるのを「眩」といい、ぐるぐる物がまわってみえたり、物が揺れ動いてみえるものを「暈」という。この2つはよく同時に起こるので、「眩暈」と称している。目がかすんで頭がくらくらするものを「目眩」といい、ひどく頭がくらくらし目の前が暗くなるものを「眩冒」という。

 眩暈の原因について『内経』では「諸風掉眩、みな肝に属す」、「上気不足」、「髄海不足」などをあげている。また眩暈について歴代の代表的な医家である劉河間は風火との関係を、朱丹渓は痰との関係を、張景岳は虚との関係をそれぞれ重視している。

①肝陽の亢進による眩暈:怒りやストレスなどにより肝の疏泄機能が失調すると肝鬱の状態がおこる。それが改善しないと熱化して肝陰を損傷するようになる。このために肝陽が亢進し、頭目に影響すると眩暈がおこる。

②痰濁による眩暈:飲食不節や労倦などにより脾胃を損傷すると、運化機能が低下して痰湿が生じる。この痰湿が中焦に阻滞しているために清陽が頭部に昇らず、また濁陰が降りないと眩暈が起こる。

③気血両虚による眩暈:脾胃虚弱のために気血の生成が悪くなると、気虚のために清陽が頭部にうまく到達できなくなり、また血虚のために脳をうまく栄養できなくなって眩暈が起こる。また慢性疾患により気血を消耗したり、吐血、下血、崩漏などにより出血過多となっている者にも眩暈が起こる。

④腎精不足による眩暈:腎に蔵されている精は髄を生じ、脳は「髄の海」といわれている。先天的に腎精が不足している者、老化や房事過多などにより腎精が不足している者は、『内経』でいう「髄海不足」となり、そのために眩暈が起こる。

B.鑑別

 肝陽の亢進による眩暈は、頭部の脹痛、いらいらする、怒りっぽいなどの症状を伴い、舌質は紅、脈は弦数を呈する特徴がある。痰濁による眩暈は、頭が重く、ぼんやりする特徴があり、舌苔は厚膩、脈は滑を呈する。この2タイプは実証である。ただし肝腎陰虚による肝陽の亢進は、虚実挟雑証である。また気血両虚による眩暈は、横になると軽減し、疲労により誘発または増強する特徴がある。腎精不足による眩暈は、精神疲労、健忘、耳鳴りを伴いやすい。この2タイプは虚証である。

C.主な病証

A)虚証例<気血両虚による眩暈>

〔病態〕

 脾は気血の生成を主っているが、脾虚のために気血の生成が不足し、脳をうまく栄養できないと眩暈が起こる。動くと増強し、疲れると誘発するという特徴がある。また心は血を主り、その華は面(顔面)にあるが、血虚のために顔面は蒼白、また唇や爪甲の血色も淡白になる。血虚による不眠、心悸、気虚による息切れ、話すのがおっくうなどを伴う。

〔症状・所見〕

①主要症状:よく眩暈が起こる、横になると軽減する、疲れると誘発する

②舌脈所見:舌質淡、脈細無力

③随伴症状:顔面蒼白、唇や爪甲の血色は淡白、息切れ、話すのがおっくう、疲労感、不眠、心悸、食欲不振


〔治療方針〕

 脾胃の機能向上をはかり、気血の生成を促す。主として足太陰、足陽明経穴および背兪穴を取穴し、鍼にて補法を施し、灸を併用する。

〔処方例〕

百会、脾兪、膈兪、足三里、三陰交

B)実証例<肝陽の亢進による眩暈>

〔病態〕

 肝の病理的特徴は、「動」と「昇」である。肝陽が上昇すると顔面の紅潮が起こる。また肝実証の特徴としていらいらする、怒りっぽいなどの症状が現れる。肝陽が動じて心に影響すると不眠、多夢が起こる。肝腎陰虚により肝陽が亢進するものは、陰虚の症状として五心煩熱、盗汗が現れやすく、また腰膝がだるく力が入らないという肝腎の虚による症状を伴いやすい。

B)実証例<肝陽の亢進による眩暈>

〔病態〕

 肝の病理的特徴は、「動」と「昇」である。肝陽が上昇すると顔面の紅潮が起こる。また肝実証の特徴としていらいらする、怒りっぽいなどの症状が現れる。肝陽が動じて心に影響すると不眠、多夢が起こる。肝腎陰虚により肝陽が亢進するものは、陰虚の症状として五心煩熱、盗汗が現れやすく、また腰膝がだるく力が入らないという肝腎の虚による症状を伴いやすい。

〔症状・所見〕

①主要症状:眩暈、耳鳴り、頭部の脹痛、怒ると症状が増強

②舌脈所見:舌質紅、舌苔黄、脈弦数、または舌質紅、舌苔少あるいは無苔、脈弦細数

③随伴症状:いらいらする、怒りっぽい、不眠、多夢、口苦、顔面紅潮または五心煩熱、盗汗、腰膝がだるく力が入らない、遺精

〔治療方針〕

 肝陽の亢進を抑え、必要に応じて腎陰を補う。主として足厥陰、足少陽経穴を取穴し、鍼にて瀉法を施す。また必要に応じて足少陰経穴を取穴し、鍼にて補法を施す。

〔処方例〕

風池、俠谿、陽輔、太衝、太谿