便秘と下痢を繰り返す

病院の検査で「異常なし」と言われても続く、つらい腹痛や便通の乱れ。それは過敏性腸症候群(IBS)かもしれません。 IBSは、腸自体に炎症や潰瘍などの目に見える原因がないにもかかわらず、下痢や便秘、お腹の張りが慢性的に続く代表的な病気です。日本人の10〜15%(およそ10人に1人)にみられ、特に20〜40代の働き盛りの世代に多く発症します

⚠️ まずは安全のために(レッドフラッグのご確認)

以下の症状がある場合は、他の重大な腸の病気が隠れている可能性があるため、まずは医療機関での精密検査をおすすめします。

  • 発熱や関節痛がある
  • 半年以内に理由なく3kg以上体重が減った
  • 便に血が混じる(血便・粘血便)
  • 50歳以上で初めて症状が出た

当院では、患者様の便の形状や自律神経の状態に合わせて、以下の4つのタイプに分類し、現代医学的な理論と東洋医学的なアプローチを組み合わせたオーダーメイドの鍼灸治療を行っています。

◆ 下痢型(IBS-D)

【症状チェック】

  • 緊張したときや外出前、食事の後などに急に激しい腹痛がおこる
  • 泥のような便や、水のような便が頻繁に出る
  • 「またトイレに行きたくなったらどうしよう」という不安が強い
  • ※比較的男性に多くみられるタイプです

💡 施術者向け臨床指針(当院の専門アプローチ)

  • 病態生理と主訴:情動ストレスの負荷によって大腸の分節運動が著明に亢進し、平滑筋の筋電図においてspike potentialの発現頻度が高まっている状態。東洋医学的には、精神的緊張(肝鬱)が脾を攻撃して機能失調を起こす「肝脾不和」として捉えます。
  • 選穴・鍼灸治療: 精神的な緊張を緩和し、自律神経を安定させる(疏肝)ために太衝・合谷・肝兪・百会を選択。消化器の水分代謝を正常化(健脾)させるために足三里・太白・脾兪を用います。また、大腸の異常な運動を局所からコントロールするため、体性-内臓反射理論に基づいて天枢・大巨・大腸兪・次髎を刺激し、排便リズムを調えます

◆ 便秘型(IBS-C)

【症状チェック】

  • 便が硬く、ウサギのフンのようにコロコロしている
  • 出し切った感じがせず、常に残便感がある
  • お腹が張って苦しく、排便時に強い痛みを伴うことがある
  • ※比較的女性に多くみられるタイプです

💡 施術者向け臨床指針(当院の専門アプローチ)

  • 病態生理と主訴:大腸の知覚神経の過敏性が亢進しており、より弱い刺激でも脳が不快感や痛みを感じる「内臓知覚過敏」の状態(バロスタット法における知覚閾値の低下)。慢性化すると手足やお腹の冷え、易疲労感を伴いやすく、東洋医学的にはお腹を温めて動かすエネルギーが不足した「脾腎陽虚証」に分類されます。
  • 選穴・鍼灸治療: 冷えを伴うケースが多いため、お灸を効果的に組み合わせます。陽気を補うために関元(お灸)・腎兪・太谿へ配穴。腸の推進力を高めるために足三里・太白・脾兪で健脾を図り、局所の治療点として天枢・大巨(または便秘穴)・大腸兪・次髎を用いて腸の動きを活性化させ、スムーズな排便を促します。

◆ 混合型(IBS-M)/分類不能型(IBS-U)

【症状チェック】

  • 数日間便秘が続いたと思ったら、今度は激しい下痢になるなど、便通が交互に変わる
  • お腹の症状だけでなく、頭痛、めまい、動悸、手足の冷え、不眠などが出やすい

💡 施術者向け臨床指針(当院の専門アプローチ)

  • 病態生理と主訴:視床下部-下垂体-副腎皮質系(HPA軸)を介したストレス応答の増強により、腸管からのセロトニン分泌やアセチルコリン分泌のバランスが崩れ、腸管運動が極端に乱れている状態。自律神経失調症状や不安・抑うつなどの精神症状を随伴しやすく、症状が多岐にわたるのが特徴です
  • 選穴・鍼灸治療: 多様な愁訴を一元的に捉える東洋医学の強みを活かし、全身のバランスを整える「全人的治療」を行います。中枢へのアプローチとして百会・神門・太衝で脳の過剰なストレス応答を緩和。腹部の綿密な触診により寒熱のバランスを見極めながら、天枢・大巨・大腸兪・次髎に鍼灸を施すことで、乱れた自律神経系(交感・副交感神経)のスイッチをフラットに戻し、悪循環を遮断します。